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オフショア開発はベトナム・タイ・フィリピンのどれが正解?費用・品質・リスクで比較【2026年】

「オフショア開発=ベトナム一択」——そんな時代は終わりつつあります。

日本企業のオフショア開発委託先はベトナムが圧倒的なシェアを占めていますが、近年はベトナムの人月単価が年々上昇しており、タイやフィリピンへ開発拠点を分散させる動きが加速しています。オフショア開発.comの「オフショア開発白書」によれば、ベトナムのシェアは約60%と依然トップですが、2位以下の国々への関心も確実に高まっています。

しかし問題は、ベトナム・タイ・フィリピンの3カ国を同じ軸で直接比較した情報がほとんどないことです。多くの記事は6〜15カ国を並べるだけで、実際の判断材料としては使いにくいものばかりです。

この記事では、オフショア開発の主要委託先であるベトナム・タイ・フィリピンの3カ国に絞り、費用・IT人材・品質・リスクを数値で比較します。

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オフショア開発で「3カ国比較」が必要な理由

日本からのオフショア開発委託先は、かつてはインドと中国が主流でした。しかし中国は人件費高騰と地政学リスク、インドは時差と文化的距離の問題から、2010年代後半にベトナムへ大きくシフトしました。

現在、ベトナムは日本企業にとって最大のオフショア開発委託先です。しかしベトナム一極集中にはリスクがあります。

  • 単価上昇: 複数の民間相場情報によると、ベトナムのプログラマー人月単価は2019年頃の約30万円から約40万円へ上昇傾向にある(出典:オフショア開発.com
  • 人材獲得競争: IT人材53万人に対して国内外からの需要が急増し、優秀なエンジニアの確保が年々困難に
  • 集中リスク: 開発拠点が1カ国に偏ると、法改正・自然災害・政情変化の影響を直接受ける

こうしたリスクヘッジのため、タイやフィリピンを「第2の委託先」として検討する企業が増えています。ただし3カ国はそれぞれ強みが大きく異なるため、プロジェクトの性質に合った国選びが重要です。

3カ国の基本データを比較する

まず、オフショア開発に直接関係する基本情報を一覧で確認します。

指標ベトナムタイフィリピン
人口約1億200万人約7,200万人約1億1,700万人
IT人材数(就業者ベース)約53万人約13.6万人約19万人(IT-BPM業界)
IT系大学卒業生(年間)約5.7万人約1.5万人約5万人
年齢中央値31歳40歳25歳
英語力(EF EPI 2024)60位前後96位前後20位前後
日本語学習者数(2021年調査)約17万人約6.5万人約4.5万人
時差(日本との差)-2時間-2時間-1時間

※IT人材数は各国の定義が異なるため単純比較には注意が必要です。ベトナムはソフトウェア開発従事者、タイはICTセクター就業者、フィリピンはIT-BPM業界のIT系職種を集計しています。

出典: WorldometerDEHA Magazine国際交流基金EF EPI 2024ResociaIBPAP

ポイントは3つ:

  1. IT人材の規模はベトナムが圧倒的(約53万人)。タイは約13.6万人と人口比で見ても少なく、大規模チーム編成が難しい
  2. 英語力はフィリピンが突出。英語が公用語で、ビジネス英語を実務レベルで使える人材が豊富(EFランキングでアジアトップクラス)
  3. 日本語対応力はベトナムが最強。東南アジアで最も日本語学習者が多く、日本語でのコミュニケーションが可能な開発チームを組みやすい

費用を徹底比較:人月単価は「職種」で逆転する

オフショア開発の費用比較で見落とされがちなのが、職種によってコスト優位国が変わるという事実です。

職種別・人月単価比較

人月単価とは、エンジニア1人が1ヶ月間稼働するコストのことです。ブリッジSEとは、日本語と現地語・技術の橋渡し役を担うエンジニアで、オフショア開発の品質を大きく左右するポジションです。

職種ベトナムタイフィリピン
PM(プロジェクトマネージャー)約65万円約75万円約75万円
ブリッジSE約50万円約56万円約70万円
SE(シニアエンジニア)約45万円約47万円約50万円
PG(プログラマー)約40万円約35万円約35万円

※上記は各国の主要都市(ホーチミン/ハノイ、バンコク、マニラ/セブ)での準委任契約ベースの相場です。地方都市やスキルレベルにより上下します。

出典: wakka-inc.comオフショア開発.comsma-labo.jp

オフショア開発 職種別人月単価比較 ベトナム・タイ・フィリピン

この表からわかる重要な事実:

  • PM・ブリッジSEが多いプロジェクト(大規模開発、要件定義から参画)→ ベトナムが最安
  • PGが多いプロジェクト(コーディング中心、仕様が明確)→ タイ・フィリピンが最安
  • SEクラスでは3カ国の差はほとんどない

つまり「ベトナムが一番安い」は半分正解で半分不正解です。チーム構成によってコスト優位国が逆転します。

具体例:10人月プロジェクトの総費用試算

たとえば「PM1名+ブリッジSE1名+SE2名+PG6名」の10人月チームで試算すると:

項目ベトナムタイフィリピン
PM × 1名65万円75万円75万円
ブリッジSE × 1名50万円56万円70万円
SE × 2名90万円94万円100万円
PG × 6名240万円210万円210万円
月額合計445万円435万円455万円

PG比率が高いチーム構成では、タイが月額10万円安くなる計算です。年間にすると120万円の差になります。

単価トレンド

  • ベトナム: 業界関係者の見方では年3〜5%程度の上昇傾向が続いているとされる
  • タイ: 横ばい〜微増。IT人材不足で今後上昇の可能性
  • フィリピン: 2024〜2025年にPG単価がやや下落。BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)業界の成熟で供給が安定

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開発品質と得意分野を比較する

費用だけでなく、各国が得意とする開発領域も大きく異なります。

ベトナム:Webシステム開発の王道

  • 得意分野: Webアプリケーション、業務システム、SaaS開発
  • 技術スタック: Java、PHP、JavaScript/TypeScript(React、Vue.js)、Python
  • 強み: 日本語対応チームを組める、仕様書通りの正確な開発に定評がある、細かい要件調整に対応可能
  • 品質傾向: ウォーターフォール型の開発プロセスへの適応力が高いと評価されることが多い。一方、アジャイル開発では日本側の密なコミュニケーションが求められる

タイ:組込み・IoT・製造業向けに相対的な強み

  • 得意分野: 組込みシステム、IoT、製造業向けシステム、Web開発も対応可能
  • 技術スタック: C/C++、Python、Java、.NET
  • 強み: 製造業の集積地(日系企業約6,100社、出典:JETRO 2024年度調査)であり、現場の業務フローを理解した開発が可能
  • 品質傾向: エンジニアの個人スキルは高い傾向だが、IT人材の総数が限られるため大規模チームの編成には工夫が必要

フィリピン:英語圏向け・モバイルアプリ

  • 得意分野: モバイルアプリ開発、英語圏向けサービス、カスタマーサポート系システム
  • 技術スタック: JavaScript/TypeScript、React Native、Flutter、Python
  • 強み: 英語が公用語でビジネス英語を実務レベルで使える人材が豊富。欧米クライアントとの直接やりとりが可能。IT-BPM産業が大規模に発達しており(出典:IBPAP)との連携も強い
  • 品質傾向: 欧米式の開発文化に馴染みがあり、UIデザインやUXへの感度が高いとされる。一方、プロジェクトの進捗管理は日本側が主導する体制を敷くほうが安定しやすい

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プロジェクト別おすすめ国マップ

「結局、自社のプロジェクトにはどの国が合うのか?」——以下のマトリクスで判断できます。

オフショア開発 プロジェクト種別×推奨国マップ

開発種別ごとの推奨国

プロジェクト種別最適な国理由
業務システム・基幹系ベトナム日本語で要件定義〜テストまで対応可能。大規模チーム編成が容易
ECサイト・WebサービスベトナムPHP/JavaScript人材が豊富。日本市場向けUI/UXの経験も蓄積
モバイルアプリ(日本向け)ベトナム日本語対応+React Native/Flutter人材が増加中
モバイルアプリ(グローバル)フィリピン英語でのストア対応・カスタマーサポートまで一気通貫
組込み・IoTタイ製造業の集積地。現場との連携が容易
AI・データ分析ベトナムPython人材が多く、単価もインドより割安
英語必須のグローバルSaaSフィリピン英語が公用語。米国時間帯にも近い
テスト・QA専門フィリピンBPO文化からくるプロセス遵守力。英語でのバグレポート対応可

判断に迷ったら: 日本語でのコミュニケーションが必須ならベトナム、英語が使えるなら目的に応じてタイ・フィリピンを検討、が基本方針です。

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3カ国それぞれの注意点とリスク

どの国にも固有のリスクがあります。事前に把握しておくことで、トラブルを防げます。

ベトナムのリスク

  • 単価上昇が継続中: 年3〜5%の上昇が続いており、5年後には現在のタイと同水準になる可能性
  • 知的財産権の保護: 法整備は進んでいるが、ソースコードの帰属・再委託禁止・ログ監査について契約書で明確に規定すべき
  • 旧正月の長期休暇: テト(1〜2月)前後は約2週間の稼働停止。前倒し検収やスケジュール凍結期間の設定で対応する

タイのリスク

  • IT人材の絶対的不足: 13.6万人は3カ国で最少。大規模チーム(20人以上)の編成は現実的に困難
  • 政治的不安定さ: 2014年以降のクーデターや政権交代が複数回。長期的な政策の継続性に不安
  • 日本語対応の限界: 日本語学習者数はベトナムの約3分の1。日本語ブリッジSEの確保が難しい

フィリピンのリスク

  • 納期管理の課題: 文化的に楽観的な見積もりになりやすく、進捗管理の仕組みが重要
  • 日本語人材の不足: 日本語学習者はベトナムの約4分の1。日本語でのやりとりは基本的に期待できない
  • 自然災害リスク: 台風の通過ルートに位置し、年間平均約20個が接近、うち8〜9個が上陸(出典:PAGASA統計)。停電やネットワーク障害のリスクがあるため、BCP(事業継続計画)や回線の二重化を委託先に確認すべき
  • インフラ: マニラ首都圏やセブのITパーク内は問題ないが、地方ではインターネット回線が不安定な地域もある

まとめ:自社に合った国を選ぶ3つの判断基準

3カ国の比較を踏まえ、オフショア開発の委託先は以下の3つの基準で判断できます。

判断基準①:コミュニケーション言語

  • 日本語が必須 → ベトナム一択。日本語対応チームを組める唯一の選択肢
  • 英語でOK → フィリピン(英語が公用語)またはタイ(限定的だが可能)

判断基準②:プロジェクト規模

  • 20人以上のチームが必要 → ベトナム(IT人材53万人、スケーラビリティ最大)
  • 5〜15人の中規模 → 3カ国とも対応可能
  • 小規模・特定スキル → タイ(組込み)、フィリピン(英語・モバイル)

判断基準③:開発領域

  • Webシステム・業務系 → ベトナム
  • 組込み・IoT・製造業向け → タイ
  • グローバル向け・英語必須 → フィリピン

重要なのは「1カ国に絞らない」という視点です。 ベトナムをメインの委託先としつつ、プロジェクトの性質に応じてタイやフィリピンを使い分ける「マルチショア戦略」が、今後のリスク分散と最適化の鍵になります。

よくある質問(FAQ)

Q. オフショア開発を始めるとき、最初にどの国から検討すべきですか?

A. 初めてオフショア開発を利用する企業には、まずベトナムを推奨します。日本語対応チームを組めること、日本企業との取引実績が豊富で開発プロセスが成熟していることが理由です。2件目以降のプロジェクトで、英語対応や製造業連携など特定のニーズが出てきた段階で、フィリピンやタイを検討するのがスムーズです。

Q. ベトナム以外の国を選ぶメリットは何ですか?

A. タイは製造業集積地での組込み開発に強く、フィリピンは英語が公用語で英語人材が豊富です。また、ベトナムの単価上昇が続く中、PG(プログラマー)クラスではタイ・フィリピンの方が月額5万円ほど安くなるケースもあります。委託先を分散させることでリスクヘッジにもなります。

Q. 複数の国に分散して委託すべきですか?

A. プロジェクト数が3件以上ある企業には、マルチショア戦略を推奨します。メインの委託先(多くの場合ベトナム)を持ちつつ、プロジェクトの性質に応じて他国のチームを活用する形です。ただし、管理コストが増えるため、社内に海外開発の経験者がいることが前提条件です。

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