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タイ進出ガイド|メリット・リスク・BOI制度・費用を他国比較で解説【2026年版】

最終更新: 2026年3月(BOI・JETRO・外務省公開情報を確認)

タイは東南アジアの中で「日系企業の集積が最も厚い国」です。外務省「海外進出日系企業拠点数調査(2024年10月1日現在)」によれば、タイに進出している日系企業拠点数は6,083拠点[1]。ベトナム(2,543拠点)の約2.4倍にのぼり、東南アジアでトップを維持しています。

トヨタ、ホンダ、パナソニック、キヤノン――大手製造業が1960年代から拠点を置き、半世紀以上かけて積み上げた「日系エコシステム」がタイには存在します。その厚みは、初めて東南アジアに進出する中小企業にとって大きな安心材料になります。

この記事のポイント:

  • 日系企業6,083拠点が集まる理由(インフラ・BOI・親日性)
  • タイ特有の5つのメリットと見落としがちな4つのリスク
  • 外資規制(FBA・49%ルール)・VAT・ワークパーミットの実務ポイント
  • ベトナム・インドネシアとの比較表で「タイが自社に最適か」を確認
  • 2025年に施行されたグローバルミニマム課税のBOIへの影響

この記事では、タイ進出のメリット・リスク・外資規制・手順を、ベトナムやインドネシアとの比較を交えながら整理します。

タイが向く会社・向かない会社

進出先を決める前に、自社がタイの特性に合っているかを確認しましょう。

タイが向く会社タイより他国が向く会社
自動車・電子部品など日系顧客を追う製造業低コスト労働力を優先したい(→ベトナム・カンボジア)
既存の日系サプライチェーンに乗りたい高成長の巨大内需市場を狙いたい(→インドネシア)
BOI認定でコスト優位性を確保したいソフトウェア開発・英語人材中心(→フィリピン)
安定したインフラで長期製造拠点を築きたい若年労働力の豊富さを重視(→ベトナム)
タイの中間層向け消費財・飲食を展開したい

「タイにすべき明確な理由がある」会社に向いた進出先です。「とりあえず知名度があるから」だけでは、賃金上昇や少子化リスクを後で感じることになります。

タイ進出が加速する背景 ― 日系企業6,083拠点の実態

半世紀以上の集積が生んだ日系エコシステム

タイへの日系企業進出は1960〜70年代の製造業進出を起点とし、現在は自動車・電子部品・食品加工・小売・サービス業まで幅広い業種が展開しています。

この集積の厚さが「次の日系企業」にとっての最大の安心材料です。日本語対応の会計事務所、日本人医師のいるクリニック、日本語で通じる行政手続き代行会社――進出に必要なサポートインフラがすでに揃っています。現地法人を立ち上げる際の「最初の一歩」のハードルが、他の東南アジア諸国と比べて相対的に低いのがタイの特徴です。

「チャイナプラスワン」の受け皿として再加速

米中対立の長期化と相互関税の影響で、中国に集中していた生産拠点を複数国に分散する「チャイナプラスワン」(中国1拠点だけに依存しない調達・生産戦略)が加速しています。タイはその有力候補の一つです。

特に自動車部品・電子部品のサプライチェーンはすでに確立されており、新規参入企業でも既存の調達網に乗ることができます。JETRO「2025年度アジア・オセアニア日系企業実態調査」によれば、2025年の営業利益見込みで黒字と回答した在タイ日系企業は63.3%[2]。今後1〜2年の事業展開方針については「現状維持または拡大」を選ぶ企業が多数を占め、積極縮小・撤退を予定する企業は少数派です。

東南アジア全体の日系企業動向は「東南アジアに進出する日本企業一覧【2026年最新】」で国別・業種別にまとめています。

タイ進出の5つのメリット

1. BOI優遇税制(類型別:最大3〜13年の法人税免除)

BOI(Board of Investment=タイ投資委員会)は、外資企業に対して積極的な投資奨励を行う政府機関です。製造業や研究開発など奨励業種に認定されると、以下の優遇が受けられます。

  • 法人税の免除: 業種の類型に応じて免除期間が異なる(下表参照)[3]
  • 機械・原材料の輸入関税免除
  • 外国人技術者・専門家のビザ・ワークパーミット取得支援

BOI類型別・法人税免除期間(2025年時点)[3]

類型免除期間上限
A1+(最先端技術・R&D等)10年(追加優遇で最大13年)上限なし
A1(高度技術製造等)8年上限なし
A2(中高度技術製造等)8年なし
A3(中程度技術製造等)5年投資額相当まで
A4(低技術製造等)3年投資額相当まで
B(非技術・サービス系)免除なし

追加優遇(地域・メリット加算等)を組み合わせると、A1+は最大13年、A1/A2は最大11年まで免除期間を延長できる場合があります[3]。自社の業種がどの類型に当たるかはBOI公式ガイドまたは認定コンサルタントに確認することが必要です。

法人税の標準税率は20%ですが、BOI認定を受けると実質的に0%になる期間があります。製造業を中心に、タイ進出の「コスト優位性」の核になっている制度です。

2024年12月26日にトップアップ税(グローバルミニマム課税)の緊急勅令が公布され、2025年1月1日以降開始事業年度から適用されています[4]。過去4事業年度のうち2事業年度で連結売上高7.5億ユーロ以上の多国籍企業グループは、BOI優遇でGloBEルール(OECDが主導する国際ミニマム課税ルール)に基づく実効税率が15%を下回った場合に差額分(トップアップ税)の追加納付が必要です。連結売上高基準を満たさない中堅・中小企業グループは対象外であり、引き続き従来のBOI優遇を満額活用できます。

2025年11月にBOIは従来の税優遇制度を継続する方針を公表し、グローバルミニマム税対象の大企業グループ向けにQRTC(Qualified Refundable Tax Credit=適格払戻可能税額控除:研究開発・人材育成等の費用を税額控除として現金還付する仕組み)の導入準備を発表しています[14]。ただし2025年11月時点では「準備中」の段階であり、具体的な控除率・現金還付の有無・施行時期は今後の法令・告示での確認が必要です。BOI優遇を検討する大企業グループは、QRTC移行後の実質インセンティブについて最新情報を随時確認してください。

EEC(東部経済回廊:タイ東部3県を対象とする先端産業特区)やデジタル産業など指定エリアの優遇業種については、BOI認定で追加の恩典が重畳される場合があります。

東南アジア各国の法人税率と優遇税制の詳細比較は「東南アジア6カ国の法人税を比較」をご覧ください。

2. ASEAN最大の自動車産業クラスター(ただし競争環境は変化中)

タイは「東南アジアのデトロイト」と呼ばれる自動車産業の一大集積地です。2024年の年間生産台数は約147万台(タイ工業連盟自動車部会)[5]で、ティア1(完成車メーカーへの直接納品)からティア2(部品の部品)まで、日系サプライヤーが層をなしています。「大手との取引実績を作るためにタイに進出する」という中小製造業のパターンは今も有効です。

ただし、2026年時点の競争環境は大きく変化しています。JETROの調査では、バンコク日本人商工会議所の調査で経営上の最大課題として「中国企業との競合激化」が挙がっており、「タイ国内の中国企業との競合」を課題とする日系企業は43%に達しています[17]。日系ブランドのタイ国内販売シェアも2021年の約90%から2024年には76.7%まで低下しました。EV分野での中国メーカーの進出が続いており、既存の日系サプライチェーンに乗るだけでは不十分な局面に入っています。

3. 安定したインフラと物流網

タイは東南アジアの中で最も電力・道路・港湾インフラが整備された国の一つです。工業団地内の電力供給安定性はベトナムを上回っており、計画停電リスクが低いのが特徴です。

バンコク近郊のレムチャバン港はタイ最大の深海港で、タイの主要輸出入拠点の一つです。マレーシア・カンボジア・ラオスへの陸路輸送も充実しており、ASEAN全域へのハブとして機能します。

4. 親日感情と日本語人材の厚さ

タイは東南アジアで最も親日感情が強い国のひとつとして知られています。国際交流基金「2024年度日本語教育機関調査」によれば、タイの日本語学習者数は約194,000人(世界第5位)[6]。東南アジア各国の中でも学習者の裾野が広く、日本語対応可能な現地人材の採用がしやすい環境にあります。

日系企業が集積しているため、タイ人の日本語人材は豊富で、採用難易度が他の東南アジア諸国より低い傾向があります。

5. 安定した産業基盤(他のASEAN諸国比較)

タイの2024年GDP成長率は2.5%(タイ国家経済社会開発庁、2025年2月公表)[7]と東南アジアの中では低位ですが、産業基盤やインフラは相対的に安定しており、インフレ率も低めに推移しています。通貨バーツは比較的安定しており、長期的な事業計画が立てやすい環境です。一方、近年も政局変動は続いており(2025年8月の首相罷免等)[8]、政治リスクをゼロと見なすことはできません。詳細はリスクセクションで後述します。

タイ進出で見落としがちな4つのリスク

1. 少子高齢化と人口ボーナスの終焉

UNFPA(国連人口基金)の「World Population Dashboard 2025」によれば、タイの合計特殊出生率(TFR)は1.21(2024年、UN World Population Prospects 2024基準)で、東南アジアの中では突出して低い水準です[9]。生産年齢人口はすでに縮小に転じており、「安い・豊富な労働力」を期待してタイに進出した企業が人手不足に直面するケースが増えています。

特に工業団地での製造業は求人難が慢性化しており、外国人労働者(ミャンマー人・カンボジア人)の活用なしに工場を回せない企業も少なくありません。

2. 賃金上昇とコスト競争力の低下

タイの製造業・作業員の月額基本給平均は490ドル(JETRO「2025年度アジア・オセアニア日系企業実態調査」、2025年8月時点)[2]。ベトナム(302ドル)やインドネシア(384ドル)と比較すると割高で、年々上昇しています。

最低賃金も段階的に引き上げられており、「人件費が安いから」という理由だけではタイの優位性を語れなくなっています。コスト優先ならベトナム・カンボジア、インフラ・安定性優先ならタイ、という使い分けが現実的です。

3. 外国人による土地所有の原則禁止

タイでは外国人・外資企業の土地所有は原則制限されており、主に土地法(Land Code)の規律を受けます。工場用地・事務所用地はリース契約(最大30年、延長可)が基本です。BOI奨励会社は、奨励事業の実施に必要な範囲でBOIの許可を得て土地所有が認められる場合がありますが、申請・認定のプロセスを踏む必要があります[10]。なお、外国人事業法(FBA:Foreign Business Act)は業種の参入規制を定める法律であり、土地所有規制とは別のルールです。

4. 政治リスク(クーデター・政局変動の歴史)

タイはクーデターや政変を繰り返してきた歴史があり、政権は流動的です。2026年3月時点ではアヌティン首相が続投していますが、連立構造は変動しやすく、政策の継続性には注意が必要です[8][15]。外資規制・税制が政権交代に伴い変更される可能性があるため、進出判断時には最新の政治動向を確認し、外務省・JETROの海外安全情報を随時チェックしてください。

タイ進出のリスクを専門家と確認する

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タイ・ベトナム・インドネシアの比較表

タイだけを見ていても、進出先として最適かどうかは判断できません。主要な比較対象であるベトナム・インドネシアと並べて確認しましょう。

項目タイベトナムインドネシア
GDP成長率(2024年実績)2.5%[7]7.09%[11]5.03%[12]
製造業 基本給(月額、2025年8月)490ドル[2]302ドル[2]384ドル[2]
法人税率(標準)20%20%22%
日系企業拠点数(2024年10月)6,083拠点[1]2,543拠点[1]2,103拠点[1]
人口(概算、2025年)約7,200万人[9]約1億人[9]約2.8億人[9]
人口構成少子高齢化進行若年層が厚い若年層が厚い
外資出資規制(一般)非制限業種は100%可。FBA制限業種は外資過半にFBL等が必要業種によるが外資100%可が多い業種により外資制限あり
向く業種・用途製造(自動車・電子部品)、日系エコシステム活用低コスト製造、ソフト開発2.8億人の巨大内需市場
設立難易度(目安)やや高い
BOI等の投資優遇あり(A1+: 最大13年免税)あり(業種・立地で最大4年免税等)あり(条件による)

出典番号は末尾「出典・参考文献」を参照。

タイが強い領域: 日系エコシステム、インフラ安定性、BOI制度、物流網
ベトナムが強い領域: GDP成長率、人件費コスト、若い労働力
インドネシアが強い領域: 2.8億人の巨大内需市場、高成長経済

「タイとベトナム、どちらにすべきか」で迷っている方は「ベトナムとタイ、進出先はどっち?業種別に比較」をお読みください。また、ベトナム進出を検討中の方は「ベトナム進出ガイド」もご参考ください。

タイ進出の業種別パターン

製造業(自動車・電子部品)

日系進出企業の中心を占める製造業は、バンコク周辺のアマタナコン・ロジャナ・304工業団地に集中しています。自動車部品、電子部品、化学品、食品加工が主要分野です。

BOI認定を取得し、工業団地内で操業することで、税制優遇と安定したインフラを同時に享受できるのがタイの強みです。サプライチェーンの厚みから「大手の取引先がすでにタイにいる」ケースが多く、BtoB製造業の進出先として現在も有力な選択肢です。

小売・飲食(7,200万人の内需狙い)

タイの1人当たりGDPは約7,300〜8,000ドル(2024年、世界銀行データ)[13]で、東南アジアでは上位水準。バンコクを中心にミドルクラスの消費が活発で、日系飲食チェーン(ラーメン・焼肉・居酒屋)や小売(ドン・キホーテ、無印良品)の進出が続いています。

「安売りではなく、日本ブランドのプレミアムを売る」戦略が通用しやすい市場です。

IT・デジタル(EECとデジタル特区)

タイ政府は東部経済回廊(EEC:Eastern Economic Corridor)を指定し、デジタル・自動化・医療・航空などの先端産業に対して追加的な投資優遇を提供しています。IT企業やDX支援企業のタイ進出も増加傾向にあります。

外資規制と実務の要点(FBA・49%ルール・VAT・ワークパーミット)

「タイ進出ガイド」として押さえておくべき実務上の壁を整理します。

外国人事業法(FBA)と49%規制の正確な理解

「タイは原則49%しか外資比率を持てない」と誤解されることがありますが、正確ではありません。タイの外国人事業法(FBA: Foreign Business Act)が適用されるのはFBAのリストに掲載された制限業種に限られます[16]。

  • 非制限事業(FBAリスト外): 外資100%でも原則参入可能。タイの製造業の多くはここに該当
  • 制限業種(リスト1〜3に掲載): FBL(外国人事業ライセンス)の取得が必要か、または外資比率49%以下が求められる
  • BOI認定を受けた場合: 奨励業種(製造業等)は外資100%での参入が認められ、FBAの制限が適用除外になる
  • JTEPA(日タイ経済連携協定): 一部のサービス業でもJTEPAにより外資規制が緩和される場合あり

つまり、製造業でBOI認定を取得する場合は外資100%が可能です。一方、小売・卸売・一部のサービス業はFBAリストに該当し、49%規制またはFBL取得が必要になります。参入前に業種のFBA分類を確認することが必須です。

業種別に見る外資規制の実務例

読者が気になる代表業種ごとに、FBA上の扱いをまとめます[16]。

業種FBA規制外資100%の可否主な条件・注意点
製造業非制限(リスト外)BOI認定取得で優遇拡大。外資100%が標準
卸売業制限業種(リスト3)条件付き可省令で定める資本金・店舗投資額等の条件を満たす場合に限る[※1]
小売業制限業種(リスト3)条件付き可省令で定める資本金・店舗投資額等の条件を満たす場合に限る[※1]
飲食業制限業種(リスト3)ハードルが高いFBL取得・JTEPA適用の確認が必要。タイ人パートナーとの合弁が現実的な場合が多い
コンサル・サービス制限業種(リスト3)ハードルが高いFBL取得かJTEPA・BOI適用を要確認。許認可・条約の適用可否で結果が変わる
IT受託(海外向け)非制限 or 制限業務内容次第海外向けソフト開発は非制限として整理されるケースあり。国内向けサービス提供は要確認

[※1] 小売・卸売への外資参入はFBAリスト3に該当するが、省令で定める資本金・店舗投資額等の条件を満たせば外資過半が認められる場合がある。条件は業種・事業形態により異なるため、具体的な数値要件はJETROまたはDBD(商務省事業開発局)の最新情報を確認のうえ、専門家に相談すること。

資本金の3つの論点

タイで外資会社を設立する際、資本金は目的に応じて3つの論点を分けて考える必要があります[16]。

  • 会社法上の設立額: 法定最低額は低いが、実務では業種・規模に応じて設定
  • FBA上の最低資本金: 外資比率50%超の非制限事業は最低200万バーツ、制限業種(FBL必要)は最低300万バーツ以上が原則
  • ワークパーミット取得要件: 外国人社員1名あたり払込資本金200万バーツが必要(BOI奨励会社は適用除外)

日本人1名が駐在する非制限事業の場合、FBA要件とWP要件を考慮すると払込資本金200万バーツ以上が実務上の目安となります。業種・人員計画によって異なるため、専門家への確認が必要です。

VAT(付加価値税)登録

タイのVATは7%です。年間売上高が180万バーツ(約750万円)を超える企業はVAT登録が義務となります。法人設立後の事業開始と同時に登録手続きを進めるのが一般的です。

ワークパーミット(就労許可)とビザ延長の要件

外国人が合法的にタイで就労するには「ワークパーミット(Work Permit)」の取得が必要です[16]。ワークパーミット取得の主な基準と、ビザ1年延長の要件は別々に確認が必要です。

  • 払込資本金200万バーツ/人: 一般企業の場合、外国人1名に対して払込資本金200万バーツが基本要件
  • タイ人雇用比率(4:1): 外国人1名に対してタイ人常勤4名以上の雇用が求められる。WP取得時の審査要素であり、ビザ(ノン・イミグラントB)の1年延長時にも確認される

つまり、WP取得には「資本金200万バーツ/人」と「タイ人雇用4:1比率」の両方が実務上の要件です。BOI奨励会社はいずれの要件も緩和措置が適用される場合があります。

タイ法人設立の基本ステップ

タイで事業を行う外資企業が取りうる主な形態は「現地法人」「支店」「駐在員事務所」の3つです。このうち、現地法人(タイ有限会社)にBOI投資奨励を組み合わせるケースが最も一般的です。なお、BOIはあくまで「投資奨励の認定制度」であり、法人形態の種類ではありません。一般的な設立フローは以下の通りです。

ステップ内容目安期間
1. 事業形態・規制確認BOI申請の有無、FBA分類(制限業種か否か)、FBL要否を確認1〜2週間
2. 商号予約商業登記局(DBD)に3候補を提出し、商号を予約数日
3. 定款作成・提出商業登記局に定款(覚書・規則)を提出し、株式公告を行う1〜2週間
4. 設立総会・取締役選任株主総会を開催し、取締役を選任。定款に基づく会社規則を確定設立総会後3ヶ月以内
5. 資本金払込・商業登記資本金の25%以上を払込後、取締役が法人設立申請書を提出。登記完了1〜2週間
6. 税務・社会保険登録歳入局(RD)へVAT登録(年間売上180万バーツ超が義務)、社会保険局へ届出1〜2週間
7. ワークパーミット・ビザ申請外国人駐在者のワークパーミット取得、Bビザ延長手続き1〜3週間

標準的な現地法人設立の実務期間は、スムーズに進んで1〜2ヶ月が目安です。BOI申請を並行する場合は申請審査に3〜6ヶ月を追加で見込む必要があります。また、タイ人株主の確保(外資比率規制が適用される業種の場合)など事前準備が必要な事項も複数あるため、現地専門家との早期連携を推奨します。

タイ法人設立の費用・期間・必要書類

進出形態ごとに費用感と期間の目安を整理します[16]。資本金は最低要件であり、実際の事業規模・ワークパーミット取得人数に応じて増額するケースが大半です。

項目現地法人(有限会社)支店駐在員事務所
資本金の目安FBA非制限業種: WP実務上200万バーツ/人 / FBA制限業種: FBL要件として300万バーツ以上 ※会社法上の法定最低資本金ではなく制度上の要件[16]FBL要件300万バーツ以上資本金不要。ただし年間運営資金の送金(通常数百万バーツ程度)が必要
登記費用(政府手数料)[18]資本金に応じて変動(目安5,000〜数万バーツ)別途FBL取得コストが加算FBL不要
設立代行費用(専門家報酬)[※2]5〜15万バーツ程度10〜20万バーツ程度5〜10万バーツ程度
標準的な設立期間1〜2ヶ月(BOI申請を含む場合+3〜6ヶ月)2〜3ヶ月(FBL審査を含む場合は半年以上)1〜2ヶ月
主な用途製造・販売・サービス全般。ほとんどの進出企業が選択外資100%製造・特殊用途(実務利用は少ない)市場調査・連絡業務のみ。営業活動は不可
収益活動可(FBL取得が前提)不可

主な必要書類(現地法人の場合)[18]

  • 商号予約証明書
  • 基本定款(覚書・規則)
  • 株主名簿・取締役名簿
  • 資本金払込証明書(払込資本金の25%以上)
  • 本社所在地の証明書(賃貸借契約書等)
  • 取締役・株主のパスポートコピー
  • BOI申請を行う場合は事業計画書・財務計画書を別途提出

[※2] 設立代行費用は代行会社・業務範囲・BOI申請の有無によって大きく変動する。上記は目安レンジ。詳細は複数の現地専門家から見積もりを取ることを推奨する。

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費用・手順の詳細は「タイで法人設立する費用と手順の全まとめ」で詳しく解説しています。

まとめ ― タイ進出を成功させるために

タイは日系エコシステムの厚さ・BOI優遇・インフラ安定性の3つが揃った、東南アジアの中で最も「進出後の安心感が高い国」です。一方で、人口ボーナスの終焉・賃金上昇・グローバルミニマム課税といった環境変化も進んでおり、「とりあえずタイ」という選択は通用しなくなっています。

進出検討のチェックポイント:

  • 自社の業種にとってタイが最適か(ベトナム・インドネシアとの比較)
  • BOI優遇の対象業種に該当するか
  • グローバルミニマム課税の対象(連結売上7.5億ユーロ超、過去4年のうち2年)になるか
  • 人手不足リスクへの対策

タイへの進出は「誰かがいるから安心」ではなく、「自社の目的に合っているか」を起点に判断することが成功の第一歩です。

タイ進出に役立つ資料


出典・参考文献

  1. 外務省「海外進出日系企業拠点数調査(2024年10月1日現在)」https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page22_003410.html
  2. JETRO「2025年度アジア・オセアニア日系企業実態調査」2025年11月公表. https://www.jetro.go.jp/world/reports/2025/01/231fa237934b5b0c.html
  3. BOI Thailand「Investment Promotion Guide 2025」https://www.boi.go.th/upload/content/BOI_A_Guide_EN.pdf
  4. タイ歳入局「Emergency Decree on Top-up Tax(2024年12月26日公布)」https://www.rd.go.th/… / PwC Thailand Tax Alert (2025-01). https://www.pwc.com/th/…
  5. タイ工業連盟(FTI)自動車部会「Facts & Figures 2024」https://data.thaiauto.or.th/…
  6. 国際交流基金「2024年度日本語教育機関調査結果」2025年3月公表. https://www.jpf.go.jp/…
  7. JETRO「2024年のGDP成長率は2.5%(タイ国家経済社会開発庁公表)」2025年2月. https://www.jetro.go.jp/…
  8. タイ憲法裁判所による首相罷免(2025年8月29日). Al Jazeera
  9. UNFPA「World Population Dashboard 2025 – Thailand」(UN World Population Prospects 2024 Revision基準). https://www.unfpa.org/…
  10. BOI Thailand「Land Ownership for BOI-Promoted Companies」https://osos.boi.go.th/…
  11. 世界銀行「Vietnam GDP Growth 2024」. https://documents1.worldbank.org/…
  12. JETRO「2024年のGDP成長率は5.03%(インドネシア中央統計庁BPS公表)」2025年2月. https://www.jetro.go.jp/…
  13. 世界銀行「Thailand GDP per capita 2024」CEIC Data (World Bank source). https://www.ceicdata.com/…
  14. BOI Thailand「BOI Reaffirms Continued Tax Incentives with QRTC」2025年11月公表. https://osos.boi.go.th/…
  15. Al Jazeera「Anutin Charnvirakul takes office as Thailand PM after royal endorsement」2025年9月 / AP News「Thailand Prime Minister Anutin confirmed」2026年3月19日. AP News
  16. JETRO「外資に関する規制(タイ)」https://www.jetro.go.jp/… / JETRO「外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用(タイ)」https://www.jetro.go.jp/…
  17. JETRO「タイの競争環境(前編)中国企業の攻勢で塗り替わる現地市場の勢力図」2025年3月. https://www.jetro.go.jp/…
  18. JETRO「外国企業の会社設立手続き・必要書類(タイ)」https://www.jetro.go.jp/…

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